抒情じょじょうあふれる初夏の風物詩。水郷・佐原で、日本有数の花菖蒲ハナショウブを愛でる

日本の梅雨を彩る花といえば、アジサイが有名ですが、もう一つ、5月から6月にかけてシーズンを迎える花があります。水辺や湿地帯を中心に咲くあやめは、凛とした立ち姿と、優美な青紫の花弁で、江戸時代から愛され続けてきた情緒あふれる花。全国各地に名所がありますが、千葉県佐原は“関東2大あやめ祭り”が行われる聖地!(ちなみにもう一つは、利根川を挟んだお隣の茨城県潮来)。 アヤメ科の花には、アヤメ、ハナショウブ、カキツバタなどありますが、その品種の違いはあまり知られていません。そこで、5/26(土)~6/24(日)に開催されるあやめ祭り直前の「水郷佐原あやめパーク」で、神秘のベールに包まれたあやめの魅力と、イベントの見どころを探ってきました。

小江戸の昔町にタイムスリップ! 懐かしい街並みを散策♪

JR成田線で、千葉の北東部に位置する佐原駅へやって来ました。ここからあやめパークまで、あやめ祭り期間中はシャトルバルが出ていて約25分。今回は期間前の平日なので、循環バスを利用します。本数に限りがあり、バスの時間まで余裕があるので、佐原の町を散策することに。駅前にある観光案内所でマップを入手しつつ、見どころを教えてもらいました。江戸時代に水運で栄えた佐原は、町の南北を小野川が流れ、その周りに古い商家や民家が残っているとのこと。

瓦屋根と杉材で作られた駅舎は情緒満点
観光案内所ではお土産も販売。観光MAPは20円

駅から10分ほど歩いて小野川へ行き着くと……、そこは江戸時代にタイムスリップしたような、古い街並みが広がっていました!

小野川沿いに築100年以上の商家や民家が軒を連ねる

風に揺れる柳が風情満点の川べりをゆっくり歩くと、土蔵造りの商家や千本格子の民家が建ち並び、わくわく。しかも、古い家屋を生かして、実際にカフェやレストラン、佃煮店として営業しています。

かわいい古民家レストランを発見
荒物店では、職人が手掛けたザルやカゴを販売

通りでひと際目を引くのが、寛政12年創業の佃煮店「正上」。醤油業がはじまりで、殿様がスズメと間違えたことで命名された川魚の佃煮「すずめ焼き」が名物だそう。店舗の前には古い醤油瓶が積まれ、お隣には土蔵も残っています。

「正上」の店内では川魚の佃煮を販売
歴史を感じさせる醤油瓶がオブジェのよう
店舗、蔵ともに県指定有形文化財

さらに川沿いを歩いていると、目の前を小舟がスイ~ッ!? かつて交通手段に使われていたサッパ舟の遊覧舟があり、水上から風情ある街並みを巡ることができるのだそう。乗りた~い!しかしバスの時間の関係でなくなく断念しました…。代わりに、舟乗り場の目の前にある桶橋・通称ジャージャー橋の名物、ジャージャーと音を立てる落水の様子をばっちり鑑賞!

舟めぐりは約30分・大人1300円
桶橋は毎時00分と30分に水がジャージャーと流れる

楽しくて、あっという間に時間が過ぎてしまいましたが、気づけばバス発車の15分前! 早く駅前に戻らなきゃ…でも目の前に、「しょうゆジェラートアイス」の看板を見つけてしまい、一瞬迷って注文。 だって「佐原は醤油の里」って書いてあるし、さっき見た佃煮店・正上の生醤油を使用しているとあるから、これは食べなきゃ後悔するハズ! 出てきたのは、薄茶色のアイス。一口食べると、さっぱりとしたミルク味の中に、香ばしい醤油の風味が広がり、美味しい! 食べて正解!! ほんのり甘塩っぱさがアクセントで、クセになる味ですね~。 ひんやり潤いをチャージした分、汗をかきかき早足でがんばって駅へ向かいます。

キメラパーキングに併設の売店で販売しているしょうゆジェラートアイス350円
関東随一の規模! 400品種・150万本を誇る「あやめパーク」の魅力をナビ

佐原駅前から紫色の小型バスに乗り、本題のあやめパークへ! こちらは、水郷筑波国定公園内にあり、豊かな水と緑を生かした約8㏊の植物園です。昨年4月に拡大リニューアルして、より巡りやすくきれいに整備されました。案内してくれるのは、香取市の職員さんで園管理を担当する奈良好陽さん。

入園料は5~8月大人600円、あやめまつり期間中は800円
お花を愛する職員の奈良好陽さん

訪れたのは5月上旬でシーズン前ですが、園内には、早くもピンクのハナショウブが花開いていました。「これは、“春の灯(あかり)”という早咲きの品種。今年は暖かいから、例年より全体的に咲くのが早そうですね」と奈良さん。昔から水郷として栄えた香取市佐原では、豊かな水辺景観を生かし保存するために、アヤメやハナショウブの栽培を行い、昭和44年に前身となる水生植物園が開園したんだそう。

ところで、アヤメ、ハナショウブ、カキツバタって、どう違うのでしょう? 「『いずれアヤメかカキツバタ』ということわざがありますが、美女揃いで見極めがつかない状態を表わしています。その通りに、アヤメもハナショウブもカキツバタも同じアヤメ科アヤメ属で、見た目はよく似ているけれど、別の花なんです」と奈良さん。ふむふむ、つまり「あやめパーク」は、アヤメ科のお花を総称してるんですね。

ゲートの前で見ごろを迎えたハナショウブ「春の灯」
アヤメ(写真)→カキツバタ→ハナショウブの順で咲く

「外側の花びらの付け根で見分けられるんですよ。アヤメは網目模様、ハナショウブは黄色、そしてカキツバタは淡黄色。このパークはハナショウブがメインで、400品種・150万本ほど植生。ハナショウブは江戸時代から品種改良が盛んに行われていたので、種類が豊富なんです」と教えてくれました。 ではさっそく奈良さんと一緒にパークめぐりへ。ハナショウブは20株ほどがひとかたまりで植えられ、それぞれ名札が立てられています。「江戸系・五月晴」、「肥後系・舞扇」、「伊勢系・旭丸」など、粋な名前ばかりで、咲いていなくてもなんだか想像力をかき立てられますね~。

水辺の広がるパークに遊歩道や島、橋などを配置
江戸・肥前・伊勢系のハナショウブが植生

一つの品種が咲く期間は1週間~10日ほど。早咲きから遅咲きまでが、約1ヶ月間かけて順次花開き、今年の見ごろのピークは6月上旬の予定だそう。ちなみにあやめまつり期間中、園内はこんな感じになります!

去年のあやめまつり期間中の園内の様子。
紫や白の花弁をつけ、凛とした立ち姿が美しい!

パークの奥は、昨年のリニューアルで拡大整備されたエリア。ドッグランや遊具のある広場、7~8月に見ごろとなるハス回廊などがあります。

ハナショウブをかたどったすべり台
花が開いた様子を現わしたテーブル&ベンチ
展望台もあり園内を一望できる
女船頭さんが繰るサッパ舟に揺られて、風情満点の水路めぐり!

情緒ある水郷の園内を1時間かけて案内してもらい、大満足~。と思いきや、「一番のお楽しみはこれからですよ」と奈良さんがにっこり。ん…? その視線の先にはなんと、佐原の町で乗りそびれた、サッパ舟があるじゃないですか!? 4月~10月の花の咲く季節に、園内水路で舟めぐりをやってるんですって、やったー! 

舟を漕ぐのは粋な女船頭さん。乗船料中学生以上500円
水の中には色鮮やかな鯉の姿も

絣(かすり)のもんぺに身を包んだ女船頭さんの舵取りで、約15分間の舟めぐりへ出発。見事な竿さばきで繰りながら、ゆらゆらと小舟が進んでいきます。「サッパ舟の由来は、笹の葉に似ていることから名付けられたんですよ」と、船頭さんの解説付き。水面からだと、園内の景色がまた違って見えて楽しい! 

細い水路をスイスイと進みます
橋の下をかがんで通り抜けるのもスリリング

水面にはハスの葉が浮かび、目の高さに広がります。あやめまつりの時期は水路の両岸をハナショウブが彩り、絶景になるそうです。 「6/10(日)・16(土)・24(日)には、このサッパ舟が『嫁入り舟』になるんですよ」とも教えてくれました。水郷佐原では、昭和30年代まで舟で嫁入りする風習があって、あやめ祭りで再現するんですって。香取神宮の神職を呼んで実際に挙式も行われるなんて、なんともロマンティック!

舟から季節ごとの花を愛でられる
7~8月はハスの花が見ごろに

嫁入り舟に思いを馳せながら、夢見心地のまま舟めぐりも終了です。他にもあやめ祭りでは、佐原囃子やおらんだ楽隊など地域伝統の演奏や、野点でお抹茶と和菓子を楽しめたり、カフェがオープンしたりと、和情緒あふれるイベントが盛りだくさんだそう。水辺が艶やかに彩られる時期はもうすぐ! さらに7/7(土)~8/5(日)は「はす祭り」、8月下旬~10月上旬は曼珠沙華が見頃を迎え、あやめパークの初夏から秋は見どころがいっぱい。売店でハスの種をお土産にしつつ、また訪れようと誓いました。

嫁入り舟はあやめまつりの風物詩。見られたら幸せになれそう♪
植物にちなんだ商品を販売する直営売店
かわいい瓶に入ったハスの種(葉出し)は1個入り300円
modal 1
modal 2

modal 2