アフロコーン収穫体験と採りたて野菜のBBQ

こんがり焼いたトウモロコシは甘く香ばしく、夏の味覚の代表選手。実はトウモロコシはデリケートな野菜で、収穫後24時間経つと栄養が半減してしまうのだそう。収穫したばかりのトウモロコシをBBQでいただける、おいしい楽しいツアーがあると聞き、早速行ってきました。

農と暮らしと歴史を感じるプチまち歩き

東京駅から特急しおさいで銚子に到着したら、そのまま改札を出ずに2、3番線ホームの端っこへ。ローカル線で名高い銚子電鉄のレトロな車両に乗り込み、畑のある笠上黒生(かさがみくろはえ)駅を目指します。

銚子電鉄への乗り換え口
元京王電鉄の車両が現役で活躍中

笠上黒生駅でまち歩きガイドの向後さんと合流。このツアーでは、駅から畑までの道のりをガイドさんが案内してくれるのです。早速、駅名の由来やこの地方で作られていた黒生瓦(くろはえがわら)の話などを聞きながら、駅前の細い路地を抜け、畑と住宅が混在するのどかな風景の中を歩きました。吹く風に潮の香りがするので「海が近いんですか?」と聞くと、「太平洋に突き出た銚子は、海風や利根川から吹く川風など、いろんな風が吹くんですよ」とのこと。向後さんによると、銚子は34基もの風力発電が立つ風のまちなのだそう。

93年前の開業時とほぼ変わらない木造平屋建ての駅舎
畑と住宅が混在する駅前の風景。
日射しを浴びてシルバーに輝く黒生瓦の屋根

気持ちよい風を感じながら、石造りの塀が続く道を歩きます。「あれが黒生瓦ですよ」と向後さんが指差した先に、いぶし銀のような渋い瓦屋根が見えました。この辺りで採れた黒色粘土から作られた黒生瓦は、今では生産されていませんが、こうして家々の屋根にその名残を見ることができます。

道の辻に祠(ほこら)を見つけました。台座に江戸時代のこの地方の名産品である銚子石を配し、黒生瓦の屋根に波文様の鬼瓦をのせた堂々とした造りです。中に祀られているのは、海の守り神である浪切(なみきり)不動。荒ぶる海と生きてきたこの地域の古い信仰を感じさせる場所でした。

浪切不動を祀った祠
中には3体の石仏が

さらに先を行くと、道の両側の木立の向こうに海が見えてきました。坂を下る手前にあるのが、今回の目的地のヘネリーファームです。農業用のガレージなのか大きなトラクターがあり、その隣でバーベキューの準備が行われているもよう。向後さんはオーナーの坂尾英彦さんと親しげに会話をしてから、「では、こちらで」と、駅の方に戻って行きました。

坂の向こうに海が!
バーベキューの会場となる開放的なガレージ
アメリカンな雰囲気の事務所
採れたての生トウモロコシのおいしさに感激!

アフロヘアーの坂尾英彦さんは、この地で農業を営む坂尾家の12代目。もともと音楽やアメリカン雑貨が好きだったという坂尾さんは、家業を継ぐ前にDJとしてのキャリアをスタートし、就農後は農業と平行してアメリカの服飾雑貨の輸入業も行ってきたという経歴の持ち主。もっと親しみやすい農家をめざし、野菜の出張販売をはじめ、畑を使ったさまざまな体験を企画されています。

アフロヘアーがトレードマークの坂尾さん

早速、歩いてすぐの場所にある坂尾さんのトウモロコシ畑へ。青空に真っすぐに伸びる花越しに、大海原が見えました。畑に一歩足を踏み入れると、土がフカフカして気持ちいい。潮風がたっぷり降りそそぐこの辺の土は、ミネラル分が通常の2.5倍と高く、それゆえに坂尾さんのトウモロコシは、なんと糖度が19度と、フルーツに匹敵する甘さなのだとか。

海を望むトウモロコシ畑
フカフカの土

坂尾さんは大きく実ったトウモロコシを見極め、「こうやって採るんですよ」とさやをつかみ、そのまま左にひねりました。見よう見まねでやってみると、トウモロコシはメリメリと音をたてて茎から離れます。「生で食べてみてください」との言葉に、黄色いコーンの房にそのままかぶりつくと、みずみずしいジュースが口の中いっぱいに。加熱したものにはない、すっきりとした甘さは確かにフルーツのよう。

トウモロコシをもいでみました
これが採れたてです!

「トウモロコシが終わったら、キャベツの種付けをします。キャベツも甘みがあって美味しいですよ」と坂尾さん。自ら作ったキャベツを販売するにあたり、トレードマークであるアフロヘアーにかけて名付けた「アフロキャベツ」は、今では銚子市のふるさと納税の返礼品になるほど人気を博すブランドになっているのだとか。同じ畑で作るトウモロコシも「アフロコーン」として売り出し中です。その意図は「ふざけた名前なのにおいしい。そのギャップを狙っています」とのこと。さまざまなカルチャーに触れてきた坂尾さんのセンスが光るネーミングです。

「ヒゲがアフロみたいだから」ということで名付けられたアフロコーン
農体験の際にかぶると盛り上がるということで用意されたアフロのウィッグ
銚子の海と大地の産物をバーベキューで味わいつくす!

収穫した「アフロコーン」を小脇に抱え、ガレージに戻ります。いよいよお待ちかねのBBQタイム。グリルの上ではアフロコーンのほか、坂尾さんの畑で採れたナスやバジル、千葉県産の豚肉に、銚子名物の真イワシの干物がところ狭しと並んでいます。

採れたてをシンプルに炭火で
さやからはち切れんばかりの枝豆

焼き上がりを待つ間、枝豆をつまみます。これももちろん採れたてです。ひと粒ひと粒が大きく、ほっくりとした甘みがあって美味。「別料金でもよければ地元のビールがありますよ」との声に素直に応じたのは言うまでもありません。

こんがり焼き上がった野菜や肉が食べやすい大きさになって運ばれてきました。地元のしらすをふんだんに盛ったごはんにアフロコーンのポタージュ付き。もう見た目からしておいしそう。近隣の犬吠埼がポルトガルのロカ岬と友好岬であることから、チョイスしたというポルトガルの陶器にも、坂尾さんのこだわりが光ります。

銚子の地のものを集めたバーベキュープレート

まずは、ポタージュをひと口飲んで、驚きました。アフロコーンをミキサーで細かくし、豆乳で割っただけというスープは、さわやかな甘みといい、すっきりしたあと味といい、先ほど畑で食べたコーンの味がそのまま生きている感じ。これはスーパーで買うトウモロコシでは引き出せない味でしょう。

すっきりとした甘みがおいしいコーンポタージュ

次に、焼きトウモロコシ。こんがり焼くことで甘みとコクが増しています。傍らにある生トウモロコシは、作物の糖度が最も高くなる朝に採ったもの。シャキシャキとして口の中がリフレッシュします。このように採れたてと朝採れの二つの味を食べ比べできるのは、農家の庭先で行うバーベキューならでは。

香ばしい焼きトウモロコシ
小玉ねぎの蒸し焼きはとろけるうまさ
銚子名物のいわしを頭から丸ごとパクリ

おなかも満ちたところで自家製のコーン茶をいただきました。ヤングコーンの内側のやわらかいひげを乾燥し焙煎したというコーン茶は、ほんのり甘みがあり、トウモロコシの風味を凝縮したような力強さのある味わいで、締めにぴったりでした。

自家製のコーン茶
コーン茶の原料となるヤングコーンのヒゲ

太陽が少し西に傾き始めた14:30。着いてから2時間しか経っていないのに、すっかりくつろいで過ごせたのは、採れたての野菜のおいしさなのか、それとも坂尾さんの人柄のせいなのか。おそらく、その両方なのでしょう。おなかだけではなく心も満たされた体験の旅となりました。このツアーには銚子電鉄の1日フリー乗車券が付いているので、さらに足を伸ばして海に行ったり、街歩きをするのもおすすめです。夏の銚子を楽しんでくださいね!

「去年うれしかったことのひとつが、銚子の観光ポスターに自分の畑が使われたこと」と語る坂尾さん。料理を作ってくれた奥様と。
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