地球を感じるまち、銚子
〜2億年前から江戸時代まで、地球と人の営みをめぐる旅〜

銚子と言えば、日本一の水揚げ量を誇る漁業のまちであり、醤油のまち。しかし、銚子の魅力はそれだけではありません。銚子は、日本ジオパークに認定された「地球を体感できるまち」でもあるのです。この夏は、銚子でちょっとスケールの大きな旅を楽しんでみませんか?

あいにくの曇りとなったこの日、東京駅から特急「しおさい」に乗り込んでやってきたのは、関東最東端の銚子市の玄関口である銚子駅。ここからローカル線の銚子電鉄に乗り換え、白亜紀の地層が見られる犬吠埼へ向かいます。

特急「しおさい」
できたてを味わえる、ぬれ煎餅の手焼き体験

これまで何度か廃線の危機に追い込まれながら、地元有志や全国の鉄道ファンからの支援により存続してきた銚子電鉄。その再建のシンボルとなったのが、「ぬれ煎餅」でした。犬吠駅には、このぬれ煎餅を自分で焼けるコーナーがあり、旅のおやつに焼きたてのぬれ煎餅をゲットすることができます。

白壁のホームに海をイメージした車両が映えます
アーチ状の切符売りがレトロでかわいい!
ぬれ煎餅の手焼き体験コーナー

ぬれ煎餅の手焼き体験は2枚で100円! 作り方は、加熱したコンロの網に白くて薄いせんべい生地をのせ、トングでひっくり返しながら、両面をこんがり焼いて銚子特産の醤油に、さっとくぐらせるだけ。切り餅がぷくーっと膨れるように、薄っぺらい生地が急に膨れてくるので、すかさずトングの腹を使って平らにならすのが、上手に焼くコツです。

両面ムラなく焼いて……
濃い口醤油にドボン
焼きたては別格の味わい

焼きたてを食べてみると、サクッとした食感と濃い口の醤油がじゅわっとしみ出すフレッシュな味わいが楽しめて、しっとりとしたぬれ煎餅とはまた違うワールド。是非一度お試しあれ。

■ぬれ煎餅手焼き体験
時間:10 : 00~16 : 00(要予約)
問合せ:犬吠駅 0479-25-1106(受付9 : 00~17 : 00 )

犬吠埼で白亜紀の地球にふれる

犬吠駅から犬吠埼までは歩いて約10分ほど。銚子観光のメッカである白亜の犬吠埼灯台が見えてきました。その足元にある珍しい白い郵便ポストの前で、あらかじめ申し込んでいたジオガイドの房州さんと合流。銚子ジオパーク推進協議会で派遣しているガイドさんは、1人/150円(4名以上から)で3時間ほど、ガイドをしてくれます。

ジオガイドの申込はこちらから >

空に溶け込む犬吠埼灯台と白い丸形ポスト
なんとも千葉らしいお名前の、ジオガイドの房州さん
画面まん中の3つの岩が「荒磯に波」のロケ地

犬吠埼の断崖から下をのぞき込むと、岩にザパーンと打ち寄せる波しぶき。「この風景、見覚えありませんか?」と房州さん。なんと、東映映画のオープニングでおなじみの「荒磯に波」のロケ地なのだとか。あれは日本海だと思い込んでいましたが、銚子の風景だったとは、まさに“灯台もと暗し”です。

海岸植物が生い茂る遊歩道を降りると、サスペンスドラマに出てきそうな荒涼とした岩礁が広がっていました。ゴツゴツした岩が一定の斜め模様を描いています。ここは恐竜が住んでいた時代である白亜紀の地層が露出する海岸線で、日本列島が誕生していない頃、浅い海に泥や砂が堆積してできた地層なのだそう。実に1億2000万年前にできた、大地のアートです。

地層が斜めになっているのは大地が大きく動いた証

「化石は見つかりますか?」と房州さんに尋ねると、「なかなか見つからないのですが、当時の生き物がはった跡なら」と、足元の岩を指しました。見ると、ざらざらした砂岩の表面に、にょろりとした生き物の痕跡が。1億年以上も前のものなのに、こんなにリアルな姿で見られるとは驚きです!

生き物がはった跡
嵐の際に海の底でできたとされる美しい縞模様

お昼ごはんのため房州さんといったん別れ、犬吠埼ホテルのレストラン「浜木綿」へ。海鮮丼や刺身定食など魚介メニュ―が豊富です。金目鯛に目のない私は、肉厚な金目鯛の唐揚げがのった犬吠埼ラーメンを注文。銚子近海は沖合で黒潮と親潮が交差する豊かな漁場。地球の恵みのプリッとした身をほおばると、ふくよかなうまみが口の中いっぱいに広がります。食べる醤油と言われ、銚子市の土産品としても人気が高い醤(ひしお)を使った上品な味わいのスープに、のげ海苔を練り込んだ麺、コリコリとした食感の布海苔(ふのり)、歯ごたえと甘みのある灯台キャベツなど銚子の名物を一度に堪能することができました。

銚子の名物を集めた犬吠埼ラーメン
ふっくら肉厚な金目鯛の唐揚げが美味!
屏風ケ浦300万年の歴史はまだまだ若い!?

次に向かったのは、犬吠埼灯台入口から『岬めぐりシャトルバス』に乗って5分の「地球の丸く見える丘展望館」です。海抜73.6mながら銚子最高峰の愛宕山にあり、屋上の展望台から360°の大パノラマが見渡せます。曇りだったため、富士山や筑波山は見えなくて残念。でも海に突き出た銚子の地形はよくわかりました。

地球の丸く見える丘展望館
屋上から望む屏風ケ浦

展望館の2階では銚子から出土した化石やコハクを見ることができました。木の樹液が化石化したコハクは、犬吠埼付近で見つかったもの。悠久の時間が作り出したきらめきは、心奪われる美しさ。まさに地球からのギフトですね。

大きな銚子産のコハク
千葉県最古の地層の犬岩

再び房州さんと待ち合わせて、千葉県最古の2億年前ごろの地層が見られる犬岩へ。その名の通り、二つの突起が耳をたてた犬のように見えます。これは千葉県最古の地層で、海洋プレートが大陸の下に潜り込む際に堆積物がはぎ取られてできたもの。たくさんのヒビが刻まれた姿は長老の風格です。

「ここは屏風ケ浦の始まりの場所なんです」と房州さんが示したのは、さわると崩れる白っぽい地層でした。その下にあるジュラ紀の地層と比べてみると、ジュラ紀のなんと硬いこと! 房州さん曰く、「屏風ケ浦は300万年前の地層ですから、すごい年の差ですよねぇ」。300万年前の地層がまだまだ若造に見えてきました……。

約300万年前(上)と2億年前ごろ(下)の地層の重なり

犬岩から歩いて15分ほど。屏風ケ浦がよく見える遊歩道にやってきました。下総台地の端っこを太平洋の荒波が削った美しい縞模様の断崖が10kmに渡り続く屏風ケ浦は、イギリスのドーバー海峡に面したホワイトクリフになぞらえて、東洋のドーバーとも呼ばれます。

銚子マリーナ海水浴場から見た屏風ケ浦

ホワイトクリフが石灰岩であるのに対し、屏風ケ浦は300万年前に海の底で堆積した火山灰や砂、泥などが重なり合ったやわらかい地層。そのもろさゆえに、以前は年間50~100cmのスピードで波に削られていたそうです。消波ブロックで侵食はくい止められていますが、今度は旺盛な植物の力により緑の侵食が始まっている様子。やはり自然の力にはかないませんね。

ワイルドな断崖と緑のコントラストがキレイ
ふだんなかなか見ることのない断層の姿
醤油工場で黒潮にのってやって来た紀州人の歴史にふれる

屏風ケ浦で房州さんと別れ、路線バスで向かったのは、創業1645年の「ヤマサ醤油」の工場。工場の敷地には、醤油の原料となる小麦を炒るこうばしい香りや蒸した大豆の甘い匂いなどが立ちこめ、豊かな気分にさせてくれます。時計をみると、見学までまだ時間があるので「しょうゆ味わい体験館」で人生初のしょうゆソフトクリームに挑戦。味はみたらしだんごに似ていて、歩き疲れた体によく合うおいしさでした。

東京ドーム4つ分の広さを誇る銚子工場。工場見学は事前申込が必要。
http://www.yamasa.com/enjoy/factory-visit/
名物のしょうゆソフトクリーム

工場見学ではヤマサ醤油の歴史や醤油造りの行程を映像で見てから、こうじ室ともろみの仕込蔵を見学。歴史解説によると、江戸時代の半ば頃、醤油の原料となる大豆や小麦、塩の産地に近い銚子では、徳川家康の利根川東遷により江戸への水上交通網が整備されると、醤油造りが一気に加速します。その醤油造りに大きな影響を与えたのが、醤油発祥の地とされる紀州(和歌山)からやってきたヤマサの創業者でした。

タンクに入っているのは醤油のもととなる「もろみ」。十分に熟成させたもろみをしぼり醤油にします。
醤油の上を歩くバーチャル体験も

工場見学の締めに待っていたのは、醤油の仕込み桶内をイメージしたプロジェクションマッピング体験でした。決して派手なショーのようなものではない、わび・さびの感じられる醤油らしい世界にしみじみと浸ります。そして、記念に出口で卓上しょうゆをいただいて、工場見学は終わります。

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